保険歯科治療
◆ 保険歯科治療とはどのようなものでしょうか?
医学的見地から、一般的にこれだけの治療が行われれば食事をとるのに差し支えないだろうと考えられる歯科治療は、ほとんど健康保険の適用になっています。
|
皆様がお持ちの社会保険証・国民健康保険証等を歯医者さんの窓口に提示した時から保険治療が開始されます。
保険診療では個々の治療に付則・細則を付け加え、ひとつひとつの処置や手術に細かく点数が設定されています。
1点が10円に設定され、歯医者さんがおこなった治療内容を固定点数で評価し、その日の点数の合計に対して皆さんは1割とか3割を歯医者さんの窓口で支払うシステムになっています。
|
これらは保険医療養担当規則というものに規定されており、これから少しでも外れると、不正請求とみなされ指導や保険医停止・歯科医師免許停止などの行政処分の対象となります。
急な歯痛・虫歯の治療・入れ歯などは、ほとんど保険の適応になっています。
|
|
■保険歯科治療だけで大丈夫でしょうか?
鹿児島においては、殆どの歯医者さんが、真面目に歯科診療に取り組んでおられます。
私は以前鹿児島県歯科医師会の社会保険委員会に所属していた時期があり、この時保険診療関連の仕事を色々と経験させて頂きました。
その時とても印象深かった事は、
『ほとんどの鹿児島の歯医者さんは、全国で最も真面目にそして真剣に保険診療を理解しようと努力し、その限られた範囲の中で精一杯患者さんの為になる歯科診療を日々真面目に行っている。』
という事実でした。
|
|
|
さらに、長年歯医者をやっておりますと、当院を初診で受診された患者さんのお口の中を拝見してびっくりする事があります。
『この治療をされた歯医者さんは健康保険でここまで丁寧に立派な治療をされているのか・・・・・。』
こんな治療を見せ付けられるたびに、身の引き締まる思いで、
『自分もこの先生を見習って、少なくともこの先生と同じレベルの治療を日々心がけたいものだ。』
と自らを省みて、その日からの診療に反映させてゆくように、頑張っております。
|
健康保険は
病気になったら、その治療をするために
日本国民が等しく同じレベルの治療を受けられる
ようにするために設けられた制度です。
ですから、この制度を維持してゆくためには、極限までコストを抑え、医師の技術料を最小限にまで抑えた規格診療にならざるを得ません。
かかってしまった病気に対する治療保険ですので、将来かかってしまう事が容易に予想される病気に対する予防に関する事柄にさえ、あまり積極的に面倒を見てくれません。
特に歯科においては使用材料・技術にかなりの制約がありますので、歯科医が十分に満足できる治療が出来ない事があるのも事実です。
次に歯科修復物の平均耐用年数を列挙してみます。
レジン(前歯に詰める白い詰め物) |
3年 |
インレー(奥歯の虫歯に詰める銀の詰め物) |
4年 |
鋳造冠(奥歯にかぶせる銀色の冠) |
6年 |
ブリッジ(抜いた歯の前後の歯を削って冠をつくりこれを土台として橋を架けるようにつくられた取り付けの入れ歯)
|
6年 |
これらはあくまで平均ですので、10年・20年と長く使用している方も沢山いらっしゃいます。
この数字を見てどうお考えになるかが、保険歯科治療に対する、ひとつの評価と言えるのではないでしょうか!
|
当院は保険医療機関の指定を受けておりますので、来院された患者さんはほとんど全員保険証を窓口で提示されます。
患者さんが特別な希望をされなければ、私もそれを受けてほとんどの治療を健康保険で行います。
|
ただ、治療の都合上
『この歯だけは保険ではなく、出来れば材料手技に制約の無い方法で治療した方が患者さんにとって有益で快適な治療になる。』
と考えた場合にのみ、その理由・費用等につき十分に説明いたします。
そして、患者さんには周囲の身内の方や友人、必要があれば他の歯科医の意見を積極的に聞いて頂くようにお勧めしています。
その結果納得いただけた方にのみ、私の持っている技術を存分に活用して、私自身が歯科医として納得のゆく治療を提供させて頂いております。
|
|
■保険歯科治療は良質の歯科医療でしょうか?
当院には、立地条件のせいなのか、時折外国からのお客さんも来院されます。
国籍はアメリカ・カナダ・イギリス・フランス・オーストラリア・アジア近隣の国とさまざまです。
こんな患者さんが来院された時には興味深くお口の中を拝見させて頂くのですが、治療された歯やレントゲンの画像を見ていつも
『なんだかパッとしない治療だなぁ。』
と感じます。
本人に聞いてみますとこの歯の治療には300ドルかかったとか、350ドルかけて治療したと話してくれます。
他国の事をとやかく言うのは私の信念に反するのですが、見てみれば何の事はない、日本では健康保険適用のアマルガム充填(金属の詰め物)だったり、普通の複合レジン充填(前歯に詰める白いプラスチックの詰め物)だったりするのです。
日本で治療すれば、一部負担金 3000円前後の治療がほとんどです。気の毒に思う事がしばしばありますが、国が違えば制度も違いますので、黙って見て見ぬふりをしています。
さて、そんな患者さんはだいたい、日本で国民健康保険に入っておられる事が多いので、そのまま保険治療を行います。
当院で保険治療を受けた外国の患者さんが、何かの用事で一時帰国して、その間に定期健診の目的で母国のかかりつけの歯科医院を受診すると、必ずといっていいほど担当した歯科医はびっくりして
『この治療はどこで受けたのか?』
『治療費はいくらかかったのか?』
と立て続けに質問をした後、まじまじと口の中を点検してゆくそうです。
そして最後に
『自分も日本に行って、日本の制度の元で歯科の治療をしたいものだ。』
と、ポツンとつぶやいた歯医者さんもいたそうです。
ちょっと昔の話になりますが、15年程前に、カナダから日本に来られた患者さんの治療を担当させて頂いた事がありました。
週に2回程度の来院で3ケ月程度かけて、お口の中を全部治療致しました。最後に治療費の一部負担金を合計して領収書を書いてあげた時、その合計額が7万円を超えていました。
その時彼に『お金を沢山使わせてしまったね。』と言うと、意外な返事が返ってきました。
『カナダでは7万円程度支払っても、この奥歯に入れたブリッジ一つさえも作ってはもらえない。それが日本では、今まで悩んできた歯に関する治療を全部してもらえた。有難い事だ。』
と言って感謝してもらえました。彼は今でも、私が行った保険診療で歯に詰めた詰め物が外れるといったトラブルも無く、今でも快適な食生活を送っています。
治療終了後15年以上経過しています。これは、大半は彼の口腔衛生にたいする情熱のたまもので、当院で治療後、実に熱心な歯磨きを怠らず、いつもお口の中を清潔にしているからだと思います。
そういえば、いつだったかアメリカの大統領がクリントンさんだった頃、大統領夫人が日本の健康保険制度をアメリカで実現できないものかと、はるばる日本にいらして勉強して帰られたという話がありましたね。
結局、アメリカでは実現できなかった様ですが、日本では今でもしっかりと存続させています。
ある意味で、日本の健康保険制度は世界でも優秀な制度のひとつであり、そのレベルもかなり高いと言うことができるかもしれません。
審美的に美しいかどうか、使い勝手が良いかどうかについてはかなり疑問が残りますが・・・。
|