ホワイトニングの診断と治療方法
◆ ホワイトニングの診断と歯の性質に応じた治療方法
さて、それでは当院では歯を見て、どの様な点に着目して歯の性質を診断し、治療方針を立案するのかを解説しましょう。
■ホワイトニングの診断と治療
まず、患者さんの元々の歯の色が重要なポイントになります。
これには、ビタシェードという歯の色見本を使用します。
ビタシェードでは歯の色を
○ A系統
○ B系統
○ C系統
○ D系統
の4つの種類に分類します。
それぞれの系統の色でホワイトニングに対する反応が異なります。
ここが第1のポイントです。
このビタシェードを明度順に並べ替えます。すると、下の様なホワイトニング用のシェードが出来ます。
これを順番に取り出して並べたのが下図です。
A・B・C・Dの色が入り混じって配列されている様子が良く分かりますね。
B1、A1が一番明るく白い色で、A4・C4が暗い色ということになります。
ビヨンドシステムによるオフィス ホワイトニングでは下図のように、1回のオフィス ホワイトニングで変化する色調・明るさに、ある程度の傾向があります。
上図のように、始めの色調により、1回のオフィス ホワイトニングで変化する色合いにはある程度パターンがあり、一度にこれ以上白くしようとすると、歯の神経にダメージを与えてしまいます。
たとえば、A4の色の歯が1回のホワイトニングでD4の色にまで白くなった場合には、
『A4シェードの歯が1回目のホワイトニングで5シェード上がってD4シェードになった。』とか
『1回目のホワイトニングでA4が5シェード上がってD4になった。』
などという言い方をします
■ホワイトニングの診断と治療
歯を拝見して元の歯の色が診断できますと、だいたいどの様な治療方針をたてれば良いかの目安が分かります。
○ A系統の色の歯
日本人に一番多い種類の歯の色です。
しかし、ホワイトニングを希望して当院を訪れる患者さんのうち、A系統の色の歯は全体の28%程度に留まっています。
このA系統の色の歯はホワイトニングの治療に素直に反応してくれます。歯科医にとって治療し易い歯であると言うことができます。
時には一度に10シェード以上明るくなって、歯科医や患者さん自身がびっくりするくらい白くなる歯の大半は、このA系統の色の歯です。
このA系統の色の歯は、当院のこれまでの治療では、1回のオフィス ホワイトニングで6シェードから8シェード改善され、10日後には2シェード程度後戻りをしています。
ですから、A系統の色の歯はオフィス ホワイトニングを1回行う毎に平均6~7シェード明るい色に変化すると考えて良いでしょう。
○ B系統の色の歯
B系統の色の歯はA系統の色の歯に比べて、同じ程度白くなるのに若干手間がかかります。
A系統の色の歯よりもホワイトニングの回数を増やさないと、目標の白さにならない事が多く 来院回数も増える事になります。
ホワイトニングを希望して当院を訪れる患者さんのうち、B系統の色の歯は全体の9%程度です。
B系統の色の歯は、1回オフィス ホワイトニングを行っただけでは、本人にはあまり白さの変化が感じられない事が多いのですが、ホワイトニングを重ねるにつれて輝く白さが増してゆきます。
B系統の色の歯は、ホーム ホワイトニングを併用して頂く方が早く治療が終了します。
このB系統の色の歯は、当院のこれまでの治療では、1回のオフィス ホワイトニング4シェードから5シェード改善され、10日後には1シェード程度後戻りをしています。
ですから、B系統の色の歯はオフィス ホワイトニングを1回行う毎に平均4シェード明るい色に変化すると考えて良いでしょう。
○ C系統の色の歯
C系統の歯が最もホワイトニング治療に反応してくれない、歯医者泣かせの歯です。
ホワイトニングを希望して当院を訪れる患者さんのうち、C系統の色の歯は全体の39%を占めています。(結構多いんです。)
確かに歯の色は美しいとは言えず、『何とかしてあげないといけないな』といつも気の毒に思う歯の色です。
最近になって面白い事に気づきました。
このC系統の歯の色の方は、第一次ホワイトニングブームが起こった数年前に、一度ホワイトニングを他の歯科医院で受けておられる方が多いのです。
しかも、良くお聞きしてみますと20~30万円かけてホワイトニングを行ったにもかかわらず、自分の希望する白さにはならず、諦めて放置していたのですが、最近の第二次ホワイトニングブームで、自分の歯が何とか白くならないかと、心を痛めておられたところ、何かのご縁で当院を紹介されて来院されているのです。
『道理で、当院にホワイトニングを希望してこられる患者さんは難症例が多い訳だ!』と納得しました。
このC系統の色の歯ですが、C1・C2程度であれば、始めからしっかりした治療計画をたてて治療を開始すれば、さほど苦労せずに輝く白い歯になります。
C3・C4のケースでは歯科医と患者さんの連携がうまく取れさえすれば、かなり御希望の歯の色に近い状態にまで白くなります。
C系統の歯の場合にはオフィス ホワイトニングだけで白い歯というわけにはゆかない事が多く、殆どのケースでホーム ホワイトニングを併用して頂く事になります。
このC系統の色の歯は、当院のこれまでの治療では、1回のオフィス ホワイトニングで3シェードから4シェード改善され、10日後には1シェード程度後戻りをしています。
ですから、C系統の色の歯はオフィス ホワイトニングを1回行う毎に平均3シェード程度明るい色に変化すると考えて良いでしょう。
○ D系統の色の歯
D系統の歯は、A系統の歯に次いでホワイトニングがし易い歯の色です。
しかし、A系統の歯とはホワイトニングに対する反応が明らかに違いますので、B系統の色の歯に準じた治療方針を立てて、慎重に治療に望むようにしています。
ホワイトニングを希望して当院を訪れる患者さんのうち、D系統の色の歯は全体の24%程度です。
D系統の歯は、B系統の色の歯に準じて、ホーム ホワイトニングを併用して頂く方が早く治療が終了します。
このD系統の色の歯は、当院のこれまでの治療では、1回のオフィス ホワイトニング4シェードから5シェード改善され、10日後には1シェード程度後戻りをしています。
ですから、D系統の色の歯はオフィス ホワイトニングを1回行う毎に平均4シェード明るい色に変化すると考えて良いでしょう。
たとえば、あなたの歯の元の色がA3.5だったとします。
この色を一番明るい色のB1にまで白くしたいとします。
シェードを11上げれば良い事になります。 単純にオフィス ホワイトニングを2回行ったとすれば、
6(A系統の歯の色の平均改善シェード)
×2(回)=
12シェード
となり、理論的には11シェード以上あがる事になりますので、これで良いのですが、実際は他の条件でシェードの戻りが来ます。
この事を考えて、3回目のオフィス ホワイトニングを行えば、白さの定着を計る事もできますし、効果も長持ちします。
この場合に、オフィス ホワイトニングだけでホワイトニングを行う場合には、3回のオフィス ホワイトニングを行えば良いという治療方針が導き出せます。
これが第一の治療方針の目安となります。
■その他の条件による治療方針
歯の概観による判断
歯に縞模様があったり、歯がグレー色の場合はホワイトニングで白くすることはとても難しいと考えてよいと思います。
こういった方は別の方法で白くすることを考えた方が良いでしょう。
ただし、ホワイトニングを行ってゆけば歯の色自体は白くなってゆきますので、歯を削らないで出来るだけ白くしたいという場合には、長期間になる事を覚悟の上でデュアルホワイトニングを行った場合には、かなりの効果があります。
縞模様があったり、歯がグレー色の場合には、その程度の問題でホワイトニングを延長して行う事になります。
患者さんの年齢による判断
歯年齢が若いと、一度で白くなりやすいといえます。 年を取ると歯の組織が硬くなってホワイトニングの薬剤が歯の内部まで浸透しにくいんですね。
一般にお若い患者さんの方が早く白くなる傾向がありますが、加齢による黄色の着色はオフィス ホワイトニングに良く反応してくれます。
いずれにしても、年齢が進むに従ってホワイトニングは期間や回数が増える事になります。
歯の大きさによる判断
歯の大きさが、顔の輪郭に対して大きい場合には、歯のエナメル質が厚い事が多いために、ホワイトニングに対する反応が異なり、標準的な大きさの歯と比較して、時間や回数が余分にかかる傾向があります。
これは、ホワイトニングが歯のエナメル質に対するアプローチである事を考えれば当然の事と言えます。
エナメル質の内部にまで薬剤の作用が浸透するのに時間がかかるためであると考えられています。
歯の表面に白斑がある場合の判断
この、歯の白斑は、ホワイトニングされ易い部分と言えます。
そのためホワイトニング後に白斑が浮き出てみえる場合があります。
白斑が歯のどの位置にあるのかの見極めが必要です。
白斑が目立っても構わない位置にあるのであれば、そのままホワイトニングを行っても構わないと考えられますが、位置によっては目立つようになると困ると考える方にはホワイトニング自体をするか止めるかの判断を迫られる事になります。
しかし、歯の色が改善すれば、多くの場合に白斑は気にしない方が良いと思います。
他人はあなたの歯ばかりをじっと見つめている訳ではありませんから。
ホーム ホワイトニング併用の効果
ホームホワイトニングの場合には、患者さんによって、実施頻度や実施時間にバラツキがあるため、正確なデータは出せませんが、2週間毎日続けると自分でもハッキリと分かるくらいに白くなるようです。
当院での経験上、2週間のホーム ホワイトニングで8~12シェードの改善を目安にしています。
このホーム ホワイトニングをオフィス ホワイトニングと併用した場合には相乗効果の様なものがあり、白さの改善はかなり加速されてゆきます。
その他の条件
歯の着色の原因が、遺伝なのか、薬物によるものなのか?
歯の表面の性状が滑択なのか、粗造なのか?
歯の神経があるのか、ないのか?
歯に詰め物があるか、ないか?
エナメル質形成不全症があるか、ないか? ある場合はどの程度か?
現在、ホワイトニングを予定している歯にむし歯があるか、ないか?
ホワイトニングが始めてなのか、以前に行った事があるのかどうか?
当院では、皆様の御希望をお聞きした上で、このような診断基準で歯のホワイトニングに対する反応を推測判断します。
そして、より適切で、より効果的な治療法を幾つか提示した上で、出来るだけ皆様の御希望に添える様なホワイトニング治療を行います。
|