口臭治療
◆ ブレスチェッカー
『口臭』ほど、簡単で難しい治療はありません。
この『口臭』の治療は、ある意味で歯科医学の集大成ではないかと思われる程、原因が多岐に渡っています。
そのため、多方面からお口の中を充分に診査してその原因を追究して、丁寧な治療・管理を行うと共に、患者さんも日常生活の中で口臭の治療・再発防止のために継続した努力して頂かないと、一時的に良い結果が出ても、暫くすると、また『口臭』が忍び寄ってくるという厄介な病態です。
実は鹿児島には私よりもはるかに『口臭』について多くの勉強をされ、設備を整え、治療方針を明確に打ち出して、専門に治療をして下さる立派な先生が沢山いらっしゃいます。
『口臭外来』を標榜されて、『口臭』と毎日真剣に向き合い、『口臭』と共に人生を歩んでいらっしゃる先生の努力には頭が下がります。
ところが、そんな勤勉な先生の元で口臭の治療を受けた患者さんが、何故か当院に『未だに口臭が良くならない』と相談に来院なさいます。私としては、とても当惑致します。
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こういった患者さんに、良く話を聞いてみますと、歯科医師の目標とする口臭治療効果と、患者さんの望む『口臭が無くなった。』という状態に微妙な食い違いや見解の相違がある事が分かります。
『口臭』の治療は前述のような、私より立派な先生に見てもらう方が良いに決まっておりますが、私が治療を担当させて頂いた『口臭』の患者さんから治療中に学んだ事や、実際に私自身が『自分の口臭防止』のために行っている事を交えながら、私なりの『口臭』についての考え方や治療方針について述べてみたいと思います。
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出来ない事は出来ない。出来る事は出来ます。
それなら、出来る事を精一杯頑張ってやって見ましょう。
■ブレスチェッカー 口臭をリアルタイムで、目に見える形で認識する。
面白い事に、口臭は一日の間でも、その強さが変化しますし、日によっても、体調によっても、その強さが変わります。
口臭を客観的に評価するためには、データが必要になります。口臭治療を熱心になさる先生は、必ず数種類の『においを測定する器械』を用いてデータを収集します。吐く息の分析、唾液の成分の分析、必要があれば尿検査を行います。
皆さんがこのような器械を購入しようとすると、一台が15万円から50万円以上します。
歯科医院で測定した時のデータはその測定した時の値で、日を変えたり、時間を変えて測定すると、値は当然違ったものになります。
安価な器械で、口臭のだいたいの程度を把握出来れば便利だと思いませんか?
街の家電製品の量販店やネット販売で『ブレスチェッカー』(多分3500円程度)という製品を入手することができます。
もし、入手できない場合には、下記よりインターネットショッピングにて入手することができます。
便利な器具ですので、必要な方は是非お使い下さい。
口臭の原因となっている化学物質は、揮発性硫化物という成分で、卵やたまねぎのようなニオイがする 成分です。ブレスチェッカーは、半導体ガスセンサーによって、この揮発性硫化物をキャッチして、その程度を数値で示してくれます。
息の吹きかけ方や、吹きかける息の量によって毎回値が多少変わりますが、自分の口臭対策には心強い見方です。
私自身も『ブレスチェッカー』を毎日数回使って自分の口臭の程度を知る目安にしています。
歯の治療に行ったら「歯医者さんの口臭が気になった。」なんて事になったら大変です。
我々歯科医師は一日の内での生理的口臭の変化を良く知っています。ですから私は「そろそろかな!?」とか「何か変だな!」と思ったら直ぐに測定して、値が高かったら直ぐに手を打つようにしています。
価格が安価なわりには、結構敏感に臭いに反応します。
高い値が出ても、それに対応する方法が分かっていれば、直ぐに実行し、その直後に『ブレスチェッカー』で再び計り直してみると、値は直ぐに変化して口臭の状態を確認する事が出来ます。
何回でも計り直しながら対策を考える事ができるので便利です。
但し、この値はあくまで、ひとつの目安に過ぎません。
正確な値は歯科医院で測定しないと得られないのですが、何の基準も無いのと比べれば、はるかに安心して生活を送れるはずです。
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実は、この原稿を書いている最中に、風邪をひいて熱が出ました。
「しめた!」と思い『ブレスチェッカー』で、病気の時の口臭についてチェックしてみました。
まず、熱発したあと寝ました。夕食時に起こされた時、直ぐに測定してみました。
結果は、最悪の5(非常に強い口臭を感じる)でした。
無理もありません。お昼ごはんを食べてから歯磨きもせず、そのまま体温の高い状態で寝ていた訳ですから、お口の中では細菌が繁殖し放題です。
とりあえず夕食を食べた直後に測定してみました。
結果は4(強い口臭を感じる)でした。
お口の中で繁殖した細菌が嚥下により、その数を減じ、さらに夕食と一緒に歯に形成された歯垢も嚥下された結果、値が一時的に下がったと考えるのが自然です。
その後、寝る前にとりあえず、いつもの通り歯磨きをしました。
その直後に測定してみると2(口臭を感じる)でした。
それならという事で口臭防止剤でうがいを丁寧に行って測定しなおしてみました。
結果は1(弱い口臭を感じるときがある)でした。
どうしても0(口臭を感じない)になりません。
普段は0になるように丁寧に歯磨きをしているのですが、このような熱が出るような病気の時は生理的な口臭は避けられないのでしょう。
数日前に『口臭がするので診察してほしい。』と来院された患者さんがいらっしゃいました。
良く聞いてみると、奥様から口臭がするという指摘を受け、自分は接客が仕事なので心配だという話でした。
本人は口臭を全く自覚していませんでした。
お口の中を拝見させて頂きました。普段から、気を使って歯磨きを熱心に行っていると言う本人の言葉を裏付けるかのように、一見きれいに清掃管理されておりました。
そこで『ブレスチェッカー』で口臭の程度を測定してみました。
見事に最高値5(非常に強い口臭を感じる)が出ました。
次に『歯間ブラシ』を使って、この患者さんの歯と歯の間を掃除しました。
この時『歯間ブラシ』に大量の歯垢が付着していましたので、本人にこの臭いを嗅いでもらいました。
直ぐに自分の口臭について納得してもらえた様でした。
標準的な日本人以上に気を使って歯磨きを行っているつもりの方でも『ブレスチェッカー』にかかると、直ぐに口臭の原因がどこかにある事を見破られてしまいます。
もし、こんな方にインプラントが植立されていたら、しょっちゅう歯茎に炎症を起こして、短期間の間にインプラントはだめになってしまう事でしょう。
その日は、歯と歯の間を歯間ブラシで徹底的に清掃した後、下の歯全体の歯石だけを時間をかけて除去しました。
上の歯の歯石は次回とりましょうという事で、再び『ブレスチェッカー』の登場です。
結果は3(強い口臭を感じる時がある)と2ランクも程度が下がっていました。
3日後、再び綺麗に歯磨きをして上の歯の歯石を取りに来院されました。
歯石を取り終わった後『ブレスチェッカー』で調べてみると、見事0(口臭を感じない)になっていました。
このようにリアルタイムで自分の口臭の目安を知る事が出来る事は、口臭で悩んでおられる方にはとても便利です。
『ブレスチェッカー』自体は決して正確な測定器ではありませんが、口臭の目安を知る上では非常に便利です。
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