いびき・睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群の大きな弊害とその治療法についてお話します。
睡眠時無呼吸症候群の症状につき述べてきましたが、特に注意したいのは、日中、突然に襲ってくる猛烈な睡魔です。
個人の健康や生活とは別に、これは社会問題になりかねない大きなリスクを含んでいるからです。
お客様と大切な商談をしている最中に、突然、ガーッと寝込んでしまったり、教壇に立っていた教師が椅子に座った途端、そのままバタンと眠ってしまったりすることもあるそうです。
そして、車の運転をしているときに突然に猛烈な睡魔が襲ってきて眠ってしまい、 交通事故を繰り返すという笑えない話も少なからず報告されています。
こうなると、もうたかが居眠り、たかがいびきとは言っていられません。単なる個人の健康の問題ではなく、人の命にかかわり、社会に損害を与える事態になりかねないからです。
アメリカ睡眠障害調査研究会が、1993年に議会およびアメリカ保健社会福祉省長官あてに『Wake up America(目覚めよアメリカ)』という警告書を提出しました。
睡眠時の呼吸障害が慢性的な睡眠不足を招き、日中の猛烈な眠気によって自動車や列車の運転中に居眠りしてしまい、重大な事故を起こす原因となっているというのです。
そのなかには、驚くほどたくさんの重大事故が具体的に紹介されているのですが、睡眠障害がこんなにも深刻な事態を引き起こすものだという典型的な事例がいくつもありました。
その幾つかを御紹介します。
1988年 アロハ航空機事故
飛行中の機体の胴体の一部がこわれ、客室乗務員が機外に放り出されて死亡。
[原因] 整備士の居眠り
1989年 アラスカ プリンス・ウィリアム海峡
エクソン社タンカーバルデス号座礁事故
過度の眠気によって、立ったまま居眠りをした三等航海士が、暗礁を知らせる警告燈に気づかず、船を座礁させてしまった。
損害額は船舶2500万ドル、積荷340万ドル、清掃費用18億5000万ドル。
[原因] 三等航海士の睡眠不足
1991年 オレゴン
列車衝突・脱線事故
衝突した両車両とも脱線。大量の燃料を撒き散らし、これが発火したため大火災となった。
[原因] 運転士の居眠り
また、スペースシャトルの爆発事故も、この睡眠時無呼吸症候群が関与していたのではないかとの情報もあり、大きな社会問題となっています。
歯科領域では、いびきおよび睡眠時無呼吸症候群に対しては、『スリープスプリント』と呼ばれるマウスピースを作製して、これを夜寝ているときに、お口の中に装着します。
このスリープスプリントは上下の型をとって、技工室で上と下のマウスピースを別々に作製し、患者さんのお口の中に試適します。
この段階で下顎が前方にくるような噛み合わせを決定して、上下のマウスピースを接着させた後、調整・研磨して完成です。
この装置をお口の中に装着して寝ると、どのような変化が起こるのでしょう。
下顎が前方(上方)に位置を変えると、舌も下顎と一緒に前方(上方)に移動します。
こうなると喉の気道が広がって正常な状態の時の様に自然に楽に呼吸が出来るようになります。
『舌と下顎が一緒に移動する』と書きましたが、これは実際に装着しますと実感として感じることが出来ます。
舌はスリープスプリントの内面に吸いつけられたかのように接触し、気道が開いて呼吸が楽になります。
現在、このスリープスプリントはお医者さんの診断の結果、
睡眠時無呼吸症候群があり、歯科的治療の適応であると判断され、
診療情報提供書によりスリープスプリントの作製を依頼された場合にのみ
健康保険の適用になります。
詳細につきましては、御来院頂ければ丁寧に御説明致します。
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