金属アレルギー
◆ 金属アレルギーとは
最近は金属アレルギーが注目され、当院にも多くの患者さんから
『自分は金属アレルギーではないか?』
という質問や問い合わせを頂くようになりました。
金属アレルギーは、病気の中でもとても「個性的」な病気であると言うことが出来ます。
ひとつの物質に対してアレルギー反応を起こす人もあれば、全く反応しない人もいます。
これは、アレルギー全般に渡って言える事ですが、アレルギー反応が直ぐに現れる型のものと、5年とか10年後になっていきなりアレルギー反応が現れる場合があります。
歯科領域での金属アレルギーはかなり時間が経ってから反応が現れるパターンが多く、これが診断を難しくしたり、治療を遅らせる原因になっています。
ここで述べてゆく内容は一部学問的に適切でない内容が含まれているかもしれません。しかし、日常の歯科診療の中で経験的に学問(特に免疫学)とは少し違った反応がある事は多くの歯科医師が経験する事です。これらの内容は『当たらずとも遠からず』と解釈して読み進んで下さい。
■お口の中に症状が現れる金属アレルギー
まずは、下の『お口の中や周囲に症状が現れる型』の概念図をしばらく眺めていて下さい。
金属と直接触れる部分や、近接した部分に炎症という形で症状を著します。
舌、口唇、歯ぐきなどが赤くなったり、ただれたりして、痛みや痒みを伴う事もあります。
現れる症状と部位により、
口内炎(口の粘膜のただれ)、
歯肉炎(しにくえん)、
舌炎(ぜつえん)、
舌痛症(ぜっつうしょう)
などが挙げられます。
皆さんは扁平苔癬(へんぺいたいせん)という病気を御存知ですか?
平らよりもやや盛り上がった苔状の赤い斑点が粘膜や舌にできるものです。
レース模様の白い斑点、かぶれ、あるいは出血を伴うこともあります。
原因が特定できずにみられることもあります。
この口腔扁平苔癬も金属アレルギーのひとつとして挙げられるものですが、確実に金属アレルギーの結果の症状であると断定しにくい疾患です。
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よく、
『口の中の奇妙なこのただれはガンではないですか?』
と患者さんから恐る恐る聞かれます。
聞くのにも勇気が必要だったとみえてかなり真剣な表情です。
丁寧に説明して納得して頂けますとホッとしたような表情になり安心して帰ってゆかれます。
我々歯科医師が一番残念に思う事は、これらの症状を見つけた時、それが確実に金属アレルギーの症状であると断定できずに、お話だけして見送らざるを得ない場合が多い事です。
この事に関しましては、後の『診断』の項目で詳しく述べます。
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■全身に症状が現れる金属アレルギー
お口の中の金属が原因で、全身の他の部位に症状が現れる場合が厄介です。
まずは概念図をしばらく眺めていて下さい。
口の中の金属の影響が、手や足や顔に出るとは誰も思わないでしょう。
しかも、突然の原因不明の皮膚病として症状が出るのですから、まさか歯科医院で治療ができるとは誰も考えつかない事でしょう。
皆さんが思わないばかりか、皮膚科医の中でも、良く知らない先生の方が多いようです。
だから皮膚科ではステロイド剤を処方して経過観察をせざるを得ません。
原因が特定出来ないので対処療法にたよらざるを得ないのも仕方ない事です。
これらの症状はお口の中の歯に詰められた金属やインプラントなどの金属が原因で、かなりの時間(5年から10年程度以上)が経過してから、突然起こります。
しかし、日常の臨床で多くの患者さんの治療をしている歯科医師にとっては、歯科金属アレルギーの代表的な症例です。
でも、歯科医に行って
『この、手にできた湿疹かぶれは歯に詰めた金属のせいではないでしょうか?』
と手を見せる患者さんは、かなり少ないと考えられます。
当院を訪れた患者さんがこのように聞いてこられたのは、私が記憶する限りでは10名に満たないと思います。
でも、原因を突き止めて、きちんと対応すれば治る病気なんですよ!
金属が直接触れる部位ではなく、血液などを介してなど直接金属が触れていない部位にも現れる皮膚炎は診断が容易ではなく、治療も後手に回る事の方が多いようです。
概念図の中の、湿疹様のかぶれがみられるものや、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう / 手のひらや足の裏に小さな水ぶくれがたくさんでき、赤くただれるもの)は歯科で使用される金属が原因で引き起こされる症状である事が多いので、このような症状でお悩みの方は一度、当院にご相談下さい。
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原因さえ突き止めれば、それに対応してきちんと解決出来る場合も少なくありません。
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